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借用書Q&A

Q.借用書に返済期日が書いてありますが、この返済期日前にはお金を返してもらえないのですか?

Q.借用書に利息や遅延損害金を記載するのを忘れてしまいましたが、相手に利息や遅延損害金を請求することはできないのでしょうか?

Q.収入印紙が貼られていない借用書は無効になるのでしょうか?

Q.机の奥から借用書が出てきて、以前知人にお金を貸していたことが分かったので返済を求めましたが、そんなに昔のことをいまさら言われても困ると言って返済に応じてくれません。貸したお金を返済してもらうようにはできないのでしょうか?

 

Q.借用書に返済期日が書いてありますが、この返済期日前にはお金を返してもらえないのですか?

ポイントA.返済期日とは、借主がお金を返さなくてよい猶予期間のことをいいます。ですので、原則として、返済期日前にはあなたがお金を返して下さいと言っても、相手はそれに応えなければならない義務はないのです。

ですが、例えば借主の資産や信用又は支払能力に重大な変更があり、返済期日まで待っていたら貸したお金を回収できる見込みが無くなってしまうような場合にまで貸主が借主に返済の請求ができないのでは、貸主にとって著しく不利益です。

このような状況に対処するために設けられるのが、「期限の利益喪失条項」です。期限の利益喪失条項が設けられていれば、借主に利益喪失条項に当てはまる事由が生じたときには、期限の利益を喪失させ、返済期日前であっても一括返済を求めることができるようになるのです。

期限の利益喪失条項は、契約書に盛り込んでおいたほうが安心ですが、記載した条件が曖昧ですと、後にトラブルを生じさせる原因ともなりますので、十分注意しましょう。

 

Q.借用書に利息や遅延損害金を記載するのを忘れてしまいましたが、相手に利息や遅延損害金を請求することはできないのでしょうか?

ポイントA.お金の貸し借りの際に利息や遅延損害金の定めをしなかった場合であっても、民間人同士のお金の貸し借りであれば、年5%の法定利息を請求することができます。商人間の金銭消費貸借契約であれば年6%の利息を請求できます。

ちなみに、利息や遅延損害金には利息制限法の適用があり、利率の上限が決められています。

利息の場合は、元本が10万円未満の場合は年20%、元本が10万円以上100万円未満の場合は年18%、元本が100万円以上の場合は年15%となっています。これらの上限利息を超える利息を定めていたとしても、上限利息を超える部分については無効となります。利息を定めた条項全部が無効となるわけではありません。また、上限利息を超えて返済がなされた場合は、その超えた部分は当然に残元本に充当されることになります。

遅延損害金の場合は、利息制限法に定められた上限の1.46倍が上限利率となります。つまり、元本が10万円未満の場合は年29.2%、元本が10万円以上100万円未満の場合は年26.28%、元本が100万円以上の場合は年21.9%が上限利率になります。ちなみに、お金の貸し借りが個人と事業者との間で行われる場合は、消費者契約法の適用があるので、遅延損害金の上限利率は元本の額に関わらず、年14.6%となります。

借主が複数の人からお金を借りていて、その返済が滞っているような場合、返済額の増大を少しでも防ぐために遅延損害金の高いところから優先的に支払う傾向があります。そのため、他の貸主より優先的に返済を受けるためにも、公序良俗や関連法令に違反しない限度で、遅延損害金の利率を高く設定しておくというのも1つの手です。

 

 

Q.収入印紙が貼られていない借用書は無効になるのでしょうか?

ポイントA.作成する文書の種類によっては、収入印紙を貼らなければならないものがあります。このような文書のことを課税文書と呼びます。作成する文書が課税文書に当たるかどうかは文書のタイトルで左右されるものではありません。例えば、作成した文書のタイトルが「念書」になっていたとしても、内容が借用書(金銭消費貸借契約書)であれば、それは課税文書に当たり収入印紙を貼付する必要があるのです。

もっとも、課税文書に収入印紙を貼らなければならないのは、あくまでもその文書を対象に課税をすることに目的があるのであって、文書成立の有効要件ではありません。したがって、借用書に収入印紙が貼られていなかった場合であっても、そのことを理由として借用書が無効になることはありません。ただし、借用書に収入印紙が貼られていなかったことが発覚したときは、納付しなかった印紙税と、その2倍に相当する金額の過怠税が課されますので注意して下さい。

 

 

Q.机の奥から借用書が出てきて、以前知人にお金を貸していたことが分かったので返済を求めましたが、そんなに昔のことをいまさら言われても困ると言って返済に応じてくれません。貸したお金を返済してもらうようにはできないのでしょうか?

ポイントある事実状態が一定期間継続した場合、その継続した事実状態に一定の法的効果が与えられることがあります。これを時効制度といい、民法の144条以下に規定されています。

この質問で問題となっている時効制度は、「消滅時効」というものです。消滅時効は権利を行使することができる時から進行します(民法166条)。借用書に返済期日が書いてある場合は、その期日が権利を行使できる時に当たります。そして、あなたが返済期日から10年間、知人に貸したお金を返してもらうように請求していなかった場合は、返済請求権は消滅してしまいます(民法167条)。ですので、あなたが返済期日から10年間ほったらかしにしておいたようなときは、知人に貸したお金を返済してもらうようにはできません。

もっとも、あなたが消滅時効完成前に、内容証明郵便で返済を要求をしたような場合は、消滅時効の進行は中断します。ただし、内容証明郵便で貸したお金の返済を求めた場合、民法147条に規定されている「請求」ではなく、民法153条に規定されている「催告」にすぎないので、この点は注意が必要です。なぜなら、催告の場合、6ケ月以内に裁判上の請求等新たに強力な手段を取らなければ、時効中断の効力が発生しないからです。

内容証明郵便による支払の要求は、時効完成を防ぐ緊急手段として考えておくべきですが、それ以上のものではないことに注意して下さい。お金を貸した場合、誰に、いくら貸して、その返済期日はいつか、ということがすぐに分かるように、借用書はしっかりと管理しておきましょう。

 

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